夜になり、ケンの謎の思い付きで近所の公園に来たボク達だったが、明らかにアウェーだった…

約10組ぐらいのストリートミュージシャンがいて、そのうちの何組かはちゃんとファンらしき人がついている。


つべこべ言っててもしょうがないのでとりあえずボクとケンはギターを取り出し歌い始めた。


オリジナルの曲などないので初めはカバー曲ばかり弾いていたが、そのうちケンの弾ける曲がなくなり、

「今日はこれで終わりかな…」とボクが呟いた時、一人の女子高生が、


「もう終わっちゃうんですか?オリジナルの曲はないんですか?もっと聴きたいんですけど♪」

とニコニコしながら催促してきた。


今時の女子高生にしては控えめのメイクでショートカットの少しボーイッシュな女の子だった。近所の女子校の制服を着ている。

「今日は初めてだからこの辺で…」

と言うケンの声に被せるようにボクは

「じゃあ最後に一曲だけ唄わせてもらうよ。」

と、高校の時作ったバラードを弾いた。

今思うと、なぜ彼女のリクエストに応えたのか、自分でもわからない。

歌う事から逃げていたボクの心を一瞬でも変える力が彼女にはあったのかもしれない…