全てを聞いた後、この胸が張り裂けるくらい泣いた。
シュンに裏切られていた事も、シュンと別れなければならない事も確かに辛かったけど…

一番辛かったのは…



シュンの歌声が聴けなくなる事だった…シュンは確かに、ギタリストとしても注目されていた…でもユメはボーカリストとしてのシュンをこよなく愛していた…
《ボーカリストのシュンは次のライヴを最後に消えちゃう…
私の好きなシュンは余命僅かなんだ…》

頭の中にはその事ばかり浮かんでいた…

観覧車を降りるとユメはシュンの前から逃げ出した…

走って…走って…走って…

もう一生分走ったんじゃないかってぐらい走った。

気が付くと一人帰りの電車に乗っていた。

その途中シュンから着信があった… 川沿いの橋を渡る電車の中、ユメは携帯を握りしめ《鳴り止め、鳴り止め…》と何度も唱えた。
着信拒否すればそれで良かっただが、ユメは自分の携帯を電車の窓から川に投げ捨てた…

「さようなら…私の愛したシュン…」

街を赤く染めていた秋の夕焼けが水平線に沈むところだった…
その風景は今まで情熱的に愛したシュンを失い、心がすっかり冷えきってしまったユメを表しているようだった…