それから侑宇と少しお喋りをしつつ、玖澄さんの波が動くのを気長に待っていた。
「それにしても…スゴイ人気だな、あいつ。 新入生代表だろ?」
「うん。 まぁ、ステキな人だしね。仕方ないよ」
「人気があるのは構わないんだが…。 まわりのことをもう少し考えられるといいんだけどな」
心配そうにまわりを見渡す侑宇。
こんなときも、自分の迷惑よりまわりのことを考えられるんだね。
ほんと、いい人だ。
でも、まわりの人が心配になるのも少し分かる。
さっきから全然動けない生徒のみんなは、心なしかイライラしてるみたい。
腕を組んで、足を踏み鳴らして、明らかにキレる3秒前の人も。
うん…。
これはちょいとやばいのかねぇ…?
嫌な予感が止まらない。
どうか、入学初日に大喧嘩、なんて事件起こりませんように…。
でも私の願いもむなしく、案の定、嫌な予感は現実となった。
「ったく… さっさと進めよ!!!」
ついに痺れを切らした一人の男子生徒が、声を荒げた。
それを皮切りに、今まで我慢してた生徒の怒りが爆発。
「そおだよ!!! いつまでやってんだ!」
「ちったぁまわりの迷惑考えやがれ!」
「おい! 落ち着けって!」
慌てて侑宇が止めに入る。
けど、怒りをあらわにした生徒の声にかき消され、全然耳に入ってないみたいだった。
「なによ! 朔夜くんと話してるんだから黙ってなさいよ!」
玖澄さんの取りまきの女の子たちも、負けじと声を張り上げる。
…いよいよ事態は、とりとめのつかない方向へ…
―――そのときだった。


