そして5分後くらい、祈璃くんはやっとのことでカップから顔を上げた。
顔を上げて、まず最初の第一声。
「…亜生、いたの」
「ガーーン!!」
ホントに忘れてたの?!
「祈璃くーん…。 まじで泣いていい?」
私本気で涙目ですよ。
「冗談」
そんな私に、祈璃くんは無表情で冷たく言い放つ。
なんだ…冗談かぁ。
冷たいのはちょっと気になるけどまぁ置いといて…
そうだよね!
忘れないよね!!
よかったなぁホントにもう!!
祈璃くんが言うと全部本気に聞こえるから怖いよ!!
私が本気で胸を撫で下ろしているなか、
「ん? どうしたの、朔夜?」
なぜか朔夜が驚いたように整った目を見開いていた。
今までの流れでどこかびっくりすることがあったかな?
小首を傾げて朔夜を見る。
朔夜は、めずらしいものでも見るように私をまじまじと見つめ、
そんな超絶美形な顔でそんなに見られたら私、穴が開いちゃいそうだよ。
と、ちょっとどころじゃなくおかしくなりそうになったとき、
「…へぇ、そうですか…」
「へ?」
ふいに呟くように小さく言い、朔夜はついっと私から目をそらした。
なにがなんだかわからないまま火照った顔で素っ頓狂な声を上げる。
そんな私を、一瞬、獲物を見るような鋭く、どこか楽しそうな目で朔夜は見やり、
「すみません、なんでもないです」
いつもどおりの、優しい紳士の笑顔で笑いかけた。
「?」
なにがなんだか、全然わからない。


