不二周助

この人物はある一種の魔性の女・・・いや、男・・・だと思う。

少なくとも俺はそう思う。

小柄なあまり筋肉のついていない身体に色白の肌、栗色の髪、そしてなによりも
女性と見間違えてしまうほどの端正な顔立ち。

長いまつげに切れ長な目。

ほんのりと赤い唇。

そんな顔でいつもにこにこと笑顔を周囲にふりまいている。


不二の何をとっても完璧なんじゃなかろうか。

性格からしても、俺には到底届かない。

他人を気遣っているその姿は部長としても

一人の人間としても、ものすごく尊敬できるものがあった。



そんな人物を、不二を見つめている俺。


こんな自分はもう・・・自分じゃないみたいだ。

人を好きになるなんて、しかも同性にこんな感情を抱くなんて。


少し前になら考えられなかったた事実だった。


だから俺は自分のこの感情にただならぬ決心をした。

世間でいわゆるタブーとされる同性愛。

しかし俺には関係ない。

不二を絶対振り向かせてみる、と心に誓った。


だが実際はとても難しくて

不二にはいつも軽くかわされてばかりだった。

勘のいい不二のことだ、もう俺の気持ちにはとっくに気がついているのかもしれない。


それであって俺を避けるのは俺がよほど嫌なのだろうか・・・


対応は他のメンバーと同じようだがどこか違う。

俺とできるだけ関わらないようにしているらしい。


でも運命というのは皮肉なほどよく出来ているものだ。


転機というのはいつか必ず訪れる。


これは俺と不二との馴れ初め、とでも言おうか。