「へえ、お金持ちなんだ!」
『・・・?判りません。マスターの家だから。』
「マスター?」
『ボクを飼っている人。』
「え?」
『あ・・・。』
ふい、と顔を背けたボクの視界に偶然入って来た光るもの。
背の低い木の枝に引っかかっている、キーホルダー。
『あったっ!』
「!!」
ボクの突然の大声に、大袈裟に肩を揺らす男の子を尻目に、その木めがけ駆け寄った。
手をこれでもかぁああって位、そりゃあもう千切れまくってるくらい伸ばしたら、案外簡単に届いた。
手の中にあるのは、金色のわっかに細い麻縄が付いていてその下に、土焼きのオカリナ。
古代の猫画が描かれたソレは、あの子が大切にしていたものだった。



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