一向に見つからない、アレ。
探す事も億劫になってきた、残り時間を三十分に控えたボク。
もういいじゃないか、と諦めるボクと
それでもアイツのために見つけたい、と諦めないボクが。
頭の中で口論を始める。
自分の為じゃなく他の人のために、と、どこか偽善な言葉が頭に浮かんだ時
しゃがみこんだボクの目の前にゴツい黒のバッシュが現れた。
キュッという高い音が耳に届く。
「大丈夫?」
優しい声がボクの頭の上に降って来た。
恐々顔を上げると、困ったような表情でボクに手を差し伸ばしてくれる男の子がいた。
小脇にオレンジのボールを抱えて。
『あ、うん。』
手を握って立ち上がり、スカートの埃を軽く叩き落す。
『ありがとうございます。』
ペコリ、と頭を下げ軽く笑う。
「どう致しましてっ。この辺の子?見かけない顔だけど?」
『あ、あの部屋に住んでます。』
ここから丁度見えるボクの部屋を指差す。



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