『あなたは、貴方のお父さまのコネでこの会社に入り、二日で重役に昇進した。この時点で、可笑しいのよ。私は、貴方のことを認めていない。』
「そ、んな・・・。」
『それに、貴方が入社した半年間。時間にして六月から数えて六ヶ月と八日。そのうち、貴方に与えられた休みは計32日。出社しなければいけないのは、159日実際に貴方が出社し定時から定時まで居た日数が二日。ね?会社は中学じゃないの。好きな時間に来て、好きな時間に帰ってもお金は出せないのよ。』
つまり、こちらとしてはぜひとも辞めていただきたい。

瑠奈の申し出に俺も大きく頷いた。
「それに、貴方、会社のお金を勝手に使ったでしょう。」
「え・・・。」
「ここに、ホストからの請求書があります。勿論、意味が判らないので貴方の家の住所を教えて立ち去っていただきました。」
「!!」

真っ青になっていく牧さん。
更に、と瑠奈が追い討ちをかける。
『貴方のお父さまにも辞めていただきます。貴方は本日限りですが、お父さまは今月一杯までです。先ほどそのこともお話させていただきました。ところで。キーボーイズを買収するとなると、キーボーイズの社長は必要ないんですよ。』

つまり、と瑠奈が丁寧に説明する。
『貴方には振りかざせる権力は残っていません。』
牧さんの家計図を見てみる。
父親は、重役で働いているが、やがてそれは終わる。奥さんは無免許で無資格の時給1000円のパート。牧さんは親戚が一つ。それが先ほどの叔父さんだろうか。
叔父さんがキーボーイズの社長、子供なし、未婚。
祖父母は既に他界。
こうなったら、生きる術がないだろ・・・。