「意味無いって?家族の元に帰ろうよ・・・!」
『ボクの家族は、あの人たちなの。』
「え・・・?」
つかまれた手を解く。
『ボクの、ううん、私の両親の会社が倒産して、お父さんとお母さんは私を売ることで金を賄うことにしたの。
私を買ったのが、大好きだった、従兄弟の、お兄ちゃんたち。』
首から提げたオカリナを見つめた。
「可笑しいじゃんか!そんなの、可笑しいよ!!!ジュリアは、ソレでいいのかよ!?」
『莉玖、私の名前は瑠奈なの。ジュリアは後から名付けられた、ペットのようなものなの。』
「・・・瑠奈。瑠奈は瑠奈でいいじゃん。親に売られたから、名前を変えられたり、殺されたりしていいはずが無いだろ?いいじゃん、自由に生きてやろうよ。外の世界に出よう?俺が、連れ出してあげる。」
莉玖の言葉に、外に出たいと思った。
自由になりたいって。
「そんなこと、させない。」
鋭い修兄の声が、私達を殺す。
「ジュリアは俺たちのものだ。」
「ジュリアは、だろ?瑠奈は瑠奈のものだ!!お前たちのものじゃない!瑠奈が自分の名前を持っている限り、瑠奈はジュリアじゃない!!」
「ジュリアは俺たちのものだ!!!」
扉の外から、修兄が叫ぶ。
『私は、私のしたいように生きたい!!七瀬 瑠奈のまま、七瀬 瑠奈として、自由に、生きたい・・・。普通の暮らしがしたい・・・。大好きだったお兄ちゃんたちに殺されたくない。お兄ちゃん達を、嫌いになりたくないよ・・・。』
今までの思いが、溢れる。
必死に自分の気持ちを押さえ込んでいた、鎖が、錠が、音を立てて壊れていく。



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