『何で・・・。莉玖が・・・。』
「これ・・・渡したくて・・・。」
手枷がついて不自由な手でボクに渡してくれたのは・・・。

『オカリナ・・・。』
「置いていったろ?俺の宝物が帰ってきたのに、ジュリアの宝物が帰らないなんて皮肉すぎるだろ。」
『ありがとう・・・。』
抱きつきたいのに、柵の所為で出来ない。
両頬から涙が溢れる。
「大切な、物なんだ?」
『うん・・・。ボクがまだ私だった頃、従兄弟の優しいお兄ちゃん達がくれたの。』
「じゃあ、大事にしなくちゃ。」
手元にあるオカリナを見つめた。
土と少しの血と傷が着いていたけれど、音は問題無さそうだ。

『莉玖、ありがとう・・・。ごめんね・・・。』
「大丈夫だよ、これくらい。俺は男の子だから強いんだ。」
そういって笑った莉玖の顔は傷だらけで、むき出しの膝や肘は擦り剥いて血が滲んでいたし、見えない所もきっと殴られて蹴られて、変色してる。


『今、助けてあげるからね。』
「それは、ダメだ。」



地獄の亡者と間違えるくらい低い声がボクの言葉を遮った。









『オー、ナー・・・。』