この道・・・。

暑くないのに、じっとりとした汗が背中をぬらす。
「ジュリア?」
マスターの胸元をぎゅっと握る。

「ああ、そうか。ジュリアも昔ここに居たからな。」
『こ、う・・・にぃ・・・。』
「・・・ジュリア、俺の事はマスターだろ?」
予想通り、洸兄の足は地下の階段を降り始めた。
コツ、コツ、
靴の裏とコンクリートの階段がぶつかり合う音が自棄に大きく聞こえる。


「おい、下衆。」
「お、れは・・・下衆じゃねぇ・・・!」
「まだそんな口が利けるのか。」
「あっ!ジュリア!!!」
着いたのは地下牢。
ボクも昔ここに囚われていた。
ここは本当の牢獄よりも苦しい。
『・・・莉玖、なんで・・・。』
「ジュリアの忘れ物を届けようと思って・・・。直接届けたかったのに、会わせてくれなかったからちょっと無茶したんだ。」
『ボクの為に・・・?こんな目に合っているの?』
「ジュリアも俺と同じ様な状況なんだろ?すぐ出してやるから。」

必死にボクに語りかけてくる、莉玖。

『マスター、出してあげてよ・・・。ボク、こんなの見たくないよ・・・。』
「ダメだ、ジュリア。」
マスターの腕の中から抜け出して、這い蹲るように柵越しの莉玖に近付いた。