マスターの顔を見上げる度に、ボクの首にまとわりつく渋色の輪から伸びる鎖が高い音を立てる。
「その服ももうボロボロで小さいだろう?新しいのを持ってきたんだ。」
ワンピースタイプのこの服は、元の白色は埃と錆ですっかり薄汚く変色し袖も破れノースリーブタイプに変わっていた。
裾も千切れ解れ、背が伸びた所為か、当初膝が隠れるまであった服は今では太ももが見えてしまっている。


マスターが持ってきたのは、白のワンピース。
長袖で、膝も隠れるほど長く上品な刺繍があしらってあった。
二週間もすれば、この服は薄汚くなってしまうのかと落ち込んだ。
それでもマスターの手前、落ち込んだ顔をすればどんな目に合うかはボクが一番よく判っていた。
マスターに手伝ってもらいながら何とか着たそれをマスターは満足気に眺めていた。



暫く無言で観賞をしていたマスターは厳重に左足に鎖で縛られた足枷を嵌め、何十にも扉に鍵をかけ出て行ってしまった。


足枷は簡単に外せるが、外したらどんな酷い目にあうか判らない。
一人部屋に取り残されたボクはこの部屋唯一の窓から三日月をみあげた。