優しい人なのだと、知っていた。
自分の思い通りにならなければ不機嫌になることも。


『マスター・・・。』
「・・・はぁ、判ったよ。外に出してやる。」
首輪と足枷が外され、手を引かれた。
ボクの右手には引き摺られ連れられるウサギちゃん。
名前をキャロット。
久し振りに立ち上がったからか、歩く事ができない。
「流石に二ヶ月座りっぱなしはきついよな。」
マスターは呆れたように笑い、ボクを抱き上げた。


所謂、お姫様抱っこ。



こうしていると思い出す。
過去の事。
ボクがまだ、私だったころのこと。