ぽたり、ぽたり。

違う、泣いているのは、ボクだ。

月がぼやけて見えるのは、月が泣いているからじゃない。
頬を伝う暖かさが、太ももに落ちる雫が、ボクが泣いている事を気付かさせた。



『ふぅっ。・・・ぼ、く、お家に・・・帰りたいよぉ・・・じゆ、うに。なりたいよぉ・・・、く、びわ・・・は。いや、だよぉ・・・。』

嗚咽の合間に漏れる、本音。
聞いているのは、月だけだから。
今だけは、泣かせて下さい。
今だけは、自分を出させて下さい。

あの時死んだはずの私は、心の奥底に閉じ込められたままだったみたい。



ボクが気がつかなかったら、私は二度と現れなかったのに。


私がいるから、ボクが傷つくの?
ボクがいるから、私が傷つくの?
私が生まれたから、ボクも生まれたの?
ボクは望まれて、私は望まれなかったの?
私が消えたら、ボクも消えちゃうの?
ボクが居る限り、私は消えないの?
私が本当に消滅したら、ボクは本当の存在になるの?
ボクは従う事を知っている、私は両親の愛を知っている。
ボクと私、どちらの知識がこの先必要になるの?



自問自答は、答えが見えない。
問題だけが降り注いで、エベレストみたいに積みあがって高くなって、もう頂上が見えない。
問題の底は尽きないのに、答えは出てきやしない。



ねえ、私は、ボクは、誰のために生きているの?

何の為に生き続けるの?