ボールの後を追い、オレンジの塊を拾い上げた。
『あった!』
「ジュリアさま。」
『!!』
「お時間を三十分を過ぎております。何をなさっていたのですか?」
『御免なさい・・・。』
「今すぐお戻りになってください。」
使用人がボクの腕を引っ張る。
どうしよう・・・。
ボクの手元には莉玖の宝物。
そして莉玖の元にはボクの宝物。
盗まれたと思われるかもしれない・・・。
後ろ髪が引かれる思いで、屋敷に閉じ込められた。
ぱあん!!
左頬に鋭い痛みが走った瞬間、じわじわと広がるような鈍い痛みを感じる。
叩かれたのだと判るのに数秒かかった。
「言いつけを守れ。」
『・・・もう、しわけありません。マスター。』
「見つかったのか。」
『・・・は、い・・。です、が・・・あの、・・・。』
「そうか、ならもう外に出る必要は無いな。もう二度と外には出るな。」
ぴしゃり!と言われ、バスケットボールを返す術を失ってしまった。
首に嵌められた首輪が酷く重く感じた。
たった一時間半、首輪と足枷が無い生活をしただけでこんなにも縛られる事を苦痛に感じてしまう。
外は既に暗く、明かりの灯る部屋から三日月が見えた。
相変わらず月は泣いていた。