「借りてよかったの?」
彼は服をつまみ、心配そうに私の顔を覗き込む。
そんな瞳を避けながら…
「別にいいよ。もう別れてるから…。今コーヒー入れるね」
顔も見ずにその場を離れキッチンへと向かった。
「彼のこと今でも好きなんだね?」
「えっ…?」
「だって別れたのに大事に彼の洋服持ってるんだもん」
……好き?
私が今でも琢己のことを…?
「ち…違うわよ。それはただ捨て忘れただけ。だいたい私から振ったんだから…!」
慌てて否定しようとする声の大きさに自分でもちょっとビックリした。
「…そっか」
彼はそう言って微笑むと私から目線を外し仔犬の体を拭きはじめた。


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