「………」
水しぶきを一身に浴びた私は仔犬を睨みつけた。
「あんたねぇ…」
怒ろうと思ったのにクリクリと大きな目を向けて嬉しそうに私を見上げる姿に、何も言えなくなってしまった。
「もう…」
小さなしっぽを振りながら擦り寄ってくる仔犬の体を覆うようにタオルをかけると、濡れて逆立った毛を拭いてやった。
「あっまた濡れてる…」
タオルを肩にかけた彼が私を見下ろす。
そんな彼を軽く睨んでやった。
「誰のせいで濡れたと思ってるの…?」
「ごめんごめん、こいつ急に飛び出していっちゃうからさ」
ニコニコと笑う彼の表情に怒る自分がバカらしく思えた。
「洋服ありがとう。これ…彼氏の?」
急いで手渡した服にハッとした。
それは琢己が泊まりに来たとき用に常に置いていたものだったから…。


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