シャワーの音が聞こえてくると、私は濡れたジャケットをハンガーにかけようとした。
チリン…♪
その瞬間、ポケットから聞こえる音。
あ…そうだ鈴…。
夕方、麗香と別れるときポケットに直し込んだのを思い出して濡れたジャケットから取り出した。
手のひらに乗せるとチリチリと音をたてながら転がり回る。
もう何度見たかわからない鈴をジッと見つめた。
こんなもの…
もう意味なんてないのに…
持ってるだけ無駄なんだ。
カシャン…
テーブルに叩きつけるように置くと鈴はカラカラと揺れた。
「キャンキャン♪」
ガタン…
「あっちょっと待てって!」
バシャバシャ!バシャ…
ガタ…カラーン!
「あー!」
「キューン♪」
浴室から聞こえてくる物音と彼そして仔犬の声。


![Dear HERO[実話]](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.781/img/book/genre3.png)