戸井田は走った。

 時間を長く止めることは銀行強盗に影響するため、できるだけ素早く、やることを済ませたかったのだ。

 戸井田はロッカーを抜けた。靴も脱いだ。廊下に足跡があるのを不審に思い、そこから侵入者が判明することを恐れたからだ。学校の外から校舎に入る門などは監視カメラがあるはずだ。校舎内は設置していないかもしれないが、念のためである。

 そして、千紗の向かった『一年C組』をさがした。

『一年A組』はロッカーを出て、左側にクラスを示すプレートが見えた。千紗の教室もこの順番通りだったので、すぐに見つかったのだ。

 教室に誰もいないことが望ましい。人がいては何もできない。

 戸井田のテクニックが必要となる。時間を止めたままでは閉まっているドアは開けられない。したがって、時間を動かし、ドアを開け、教室に誰かいればすぐに時間を止めて、今日は帰るだけだ。

 あとはネットカフェに戻って計画を練るだけだ。

 時間が止まっている間は静かなので、教室内の状況はわからない。

 廊下を誰も生徒が歩いていないので、今は授業中の可能性が高い。

 『一年C組』の教室に着いた。

 戸井田は時間を動かした。

 そして、右手を右に動かし、ドアは開いた。

 誰もいなかった。