玲も携帯電話の画面をのぞきこむように見ている。

 田久万はイラっとした。大口にである。いつの間にか慶子と仲良くなっていることに腹立ってきたのだ。

 慶子のほおが緩んだ。その横で玲が手を何度も叩いて爆笑している。

 玲の耳障りな笑い声が占拠して、慶子の笑い声はかき消された。

 慶子の笑顔を見たことで、田久万はブチキレるのを抑えた。

 そこに茂呂が教室に入ってきた。爆笑の渦がある大口には目も向けず、自分の席に座った。

「おーい、茂呂こっちこい!」

 相変わらず、大口は横暴である。右手で合図をすると、茂呂は反抗する素振りも見せず、かばんを机に置いて言われるまま足を向けた。

「これ、チョー面白いかも」

 玲は茂呂に向かって言った。

「あっ……」

 茂呂は何か言いたそうであるが、口ごもった。

 慶子もほおが緩みっぱなしである。

 大口は自信満々に腕組みをして、茂呂を見下していた。

 一体、携帯電話に何が映っているのか。茂呂が関係していることはわかったが、そんなに爆笑することがあるのか。