目覚めの悪い朝だった。

 田久万は千紗に暴言を吐いたことを悔やんでいた。しかし、素直に謝るのもばつが悪った。

 できることなら、昨日のことはなかったことにしてもらえると助かるのだが、あいにく田久万に時間を戻すことはできなかった。

 一時限目の授業まで、時間にはかなり余裕があったので、教室に向かう生徒たちは歩いている。

 走っている者はいなかった。

 田久万はいつもより五分ほど早く教室に着いた。すぐに千紗をさがした。

 まだ登校していなかった。

 ほっとした。田久万の正直な気持ちだ。

「面白いものができたぞ!」

 大口は大声だった。

 注目をしろと、言わんばかりだった。だけど、それは慶子と玲だけに向けられた言葉だった。

 慶子の席を中心に横には大口がいて、もちろん玲もいた。

 登校してきた生徒たちも視線は大口に向けられていた。

 大口が携帯電話を慶子に渡すと、受け取った。

 何かを見ている。