「あっ、だ、大丈夫です」

 答えたのは茂呂だった。目の視点も定まらず、緊張しているように、呼吸も不規則だ。

「何が大丈夫なんだ?」

 田久万は茂呂にきつく突っこみたくなったのだ。

「やめて!」

 千紗は田久万を制止した。

「大口に何をされているんだ?」

 田久万は千紗を無視するかのように、茂呂に尋ねた。

「べ、別に……」

 茂呂は話したくないようだ。下を向いたまま黙ってしまった。

「タックが変なこと言うからよ」

 千紗は邪魔と言わんばかりに冷たい視線を送った。

「何だよ! こんなやつどうでもいいだろう」

 田久万の我慢の限界だった。これ以上は無理と判断したのだ。

「よう、へなちょこ。女連れとはいい身分だな」

 そこに大口が現れて言ったのだった。