やはり駅前は人の出入りが多かった。とは言っても、午後二時では学生が多いが帰宅ラッシュの前なので、人の接触が多発するほどでもない。近くに行けば学生たちの話し声も聞こえる。

 戸井田はすましていたが、遠くから轟音で耳をふさいだ。

 上空をヘリコプターが通過中だ。

 一瞬にして、会話は消された。

 飛行機が通過する地域は必ず、この騒音で迷惑を被るわけだ。

 鉄の固まりを空中に飛ばすには膨大なエネルギーを必要とし、そして爆音を発することで成立している。

「消えろ!」

 戸井田は天空に向かって言ったが、声はもちろんかき消された。

 だから時間を止めた。

 時間の止まった世界は音が存在しない。

 その間に戸井田は駅前を離れた。