田久万はまだ誕生日がきていないので十五歳だ。見た目はイケメンではないし、身長も百七十センチで体重六十キロと平均的で、これといって特徴はない。どこにでもいる高校生だ。

 校長の長い話から開放され、教室に戻ると大きな声がした。

「何だ。お前きたのか?」

 と、田久万は声の主を見た。言ったのは大口将だ。真っ黒に日焼けをして、身長は百八十センチと大柄であるが、顔を見ると童顔でケンカは弱そうである。

「あっ……」

 大口ににらまれたのは茂呂勇だ。小柄で運動は苦手。勉強もできないし、あまり人とも話さないので、みんなはオタクだと思っている。

「夏休み中、アニメばっか見てたのか?」

 口ごもる茂呂に大口は強気である。

「い、いや……そ、そうじゃ……」

「何、言ってかわかんねーぞ!」

 大口は平手で茂呂の顔を叩いた。

 茂呂は声も上げずに後ろにのけぞった。

 田久万は大口と茂呂のスキンシップだと思って、あえて何もしなかった。

「やめない!」

 と、この二人の間に入ってきたのは肺世千紗だった。