薄っすら曇った天気の校庭は暑くなく、体調的にはちょうど良かった。

 夏休みも終わり、九月一日は久しぶりに見る顔もいるので、懐かしさで騒ぐやつもいるのだ。

 始業式は決まって、校長の長い話がある。

  生徒たちは誰も聞いてないのに、長々と口をパクパクし、中には気分が悪くなる生徒さえいる。

 話を辞めろとは言う生徒は誰もいない。

もしそんな生徒がいれば教師にこっぴどく叱られるのがわかっているからだ。

 上空からブレードスラップ音がする。

ヘリコプターだ。

 ものすごい音がするので、スピーカーから聞こえる校長の声がかき消されたのである。

 近くにヘリポートがあるからだ。

 校長はそれでも口をパクパク動かしていた。

 ほとんどの生徒は校長の話に興味がない。黙って聞いているしかなかった。話し終わるのをやり過ごし、決まった教室に帰れば、また生徒たちは話を再開するに決まっている。

 どこにでもある風景で変わったことなどない。

 今年の夏休みの終わり、昨日であるが、田久万善一はあることで悩んでいた。