田久万から見て左に慶子がいるので、ぴったりと背後についたのだ。スカート裾を親指と人差し指でつまんだ。制服のスカートさえ時間が止まるとカチンカチンに硬い。

 昨日の経験で、止まっている物を動かすのは大変で、普通なら何でもないことだが、簡単にはめくれなかった。

 田久万はすぐにあきらめた。まだ、時間は止まったままだ。

 本来は慶子の全裸を見ることが目的で、田久万はトイレに入った慶子がパンツを下ろすのを期待していたのだ。

 学校にいる限り、全裸になることはない。体育だって、下着姿で終わりだ。でも、今日は体育の授業がない。それで、思いついたのがトイレだ。パンツを下ろさないで用を済まさない女性など存在しない。

 時間が止まっている間は音などもちろんしないし、匂いだってしないはずだ。それで簡単に慶子の裸が眺めるのだ。悩みが一気に喜びに変わった瞬間だった。

 まだ、時間はたっぷりあるし、今日が駄目でも明日もある。

 だが、何もしないのも、もったいないので、とりあえず、田久万は慶子のパンツだけでも見ることにしたのだ。

 スカートがめくれないなら、かがんで見ればいいのだ。

 簡単なことだ。

 田久万はゆっくりと、かがむためにひざを曲げた。

「タック!」
 田久万の背後から声がした。時間が動き出したのかと思い、あわてて、立ち上がり振り返った。