義母を運んで、戸井田は疲労困憊していた。

「あのさ、もう、時間が止められなくなるから、あとは逃げよう」

 と、戸井田は言った。

「ええ?、ヘリコプターに乗っている人とかは?」

「無理だ。時間が止まっているから降ろすのも不可能だ」

「それじゃ、せめて、逃げ遅れている人だけでも……」

 男子高校生に促されて、断れなくなっていた。

「行くか」

 戸井田は限界にきていた。

「あの子に」

 男子高校生が指したところには、転倒している小学生がいた。

 すぐに二人で担ぎ出した。

 体力の消耗は激しく、小学生と言えども、一歩が重く前に進むのが困難だった。

「戸井田さん!」

 トンネルの前から顔を押さえて、千紗が呼んでいた。

 まずい。