戸井田の肩越しからのタックルは成功した。

 酔っている父親は簡単に横に吹っ飛ばされた。腰を打ちつけたのか立ち上がろうとしない。

「このやろう、やったな!」

 父親の殺気は収まることはなさそうだ。戸井田をジッとにらんだ。

 店内は誰も動きがない。

 戸井田は義母の手首をつかみ、店内から出るように引っ張った。

 とりあえず、義母の危機を救った。

 義母はしっかりとついてきている。

「あっ!」

 と、義母が声を上げ、戸井田は立ち止まった。

 義母はハイヒールをはいていたためにこけたのだ。道端に腰を下ろした。

 戸井田は後ろを見ると、父親がゆっくりと歩いてくる。

 もちろん手には出刃包丁を持っていた。顔も真っ赤でまるで鬼だ。

 義母も振り返って鬼の形相の父親を見てしまい、立ち上がるのが困難だ。

 戸井田はさらに強引に義母を引っ張り立ち上がらせた。

 走ることはもう無理だ。