田久万はキョロキョロと周囲を見ていた。普段なら挙動不審者と間違えられるほどにである。

 だが、動いている人は見つからなかった。

 喧騒が戻ってきた。

 田久万は時間が動いたと、思った。

 時間を止めているやつは誰だ。

 やはり見つけられなかった。

 こんなに人が多くては無理かもしれなかった。

 さらに喧騒が激しくなった。

 上空からブレードスラップ音がするからだ、

 田久万はヘリコプターを確認した。

 人の声はかき消されているが、人々が上空を見上げ始めた。しだいに立ち止まって見る人も増え、異常な挙動をヘリコプターが見せていた。

 田久万もヘリコプターに気を取られた。墜落しそうだからだ。