「五万円はウチの家計には苦しいよ。すぐに返してもらえば許してあげるから」

「何だ、その言いがかりは! さっきから盗んでないって言ってんだろう!」

「でも、こんな不思議なことできる人、他にいる? それにピンクのタオルが銀行に落ちていたよ」

「それは本当?」

「間違いないよ。名前も入っていたから、これってやっぱり……」

「俺じゃない! 他にいるんじゃない?」

「それじゃ、その人、連れてきてよ」

「連れてこれるわけないよ」

「どうして?」

「知らないもん」

「さっき、いるって言ったでしょ?」

「それはだな……」

 田久万は腹が立ったので、電話は切った。ついでに電源も切った。