田久万は帰宅するなり、千紗に連絡をすることにためらっていた。

 冷静に考えると、千紗の言葉を思い出すのだ。男から連絡先をもらった自慢話。田久万に言ってくるくらいだから、気持ちはもうないのかも知れないという不安だ。

 告白して、振られた場合に田久万は立ち直れる自信もなかったのだ。

 慶子に続き、千紗までも二人連続で振られるのはつらいことだ。

 田久万は悶々としていた。

 携帯電話が鳴った。

 着信の相手は千紗だった。

 また自慢の報告か?

 田久万は携帯電話に出ることを拒否しようとしたが、どうも気になった。

「もしもし……」

 先に声を出したのは田久万だった。

「寝てた?」

「寝てたよ」

 田久万はうそをついた。

「うそを言いなさい。本当は寝てないでしょ?」

「何でわかった?」