戸井田は見事、五万円を獲得した。いつもならコンビニに立ち寄るのだが、今日は行かないことにした。

 行けば千紗のことを考えて、失敗する恐れもあるし、これから銀行強盗以外にも、能力を使いたいから、大事に取っておきたかったのだ。

 戸井田は携帯電話を取り出し、着信履歴を見た。

 やはり、千紗からは連絡がなかった。

 終わりか?

 それともじらしているのか?

 戸井田は手袋をズボンの後のポケットに入れようとして、気がついた。

 ピンクのタオルがない。

 どこで落としたのか?

 記憶はない。

 ネットカフェに置き忘れたのかもしれない。もしかしたら、銀行に落としたのかもれなかった。

 千紗から連絡があれば、もっとあせったはずだ。連絡がないので、どうでもよくなっていた。

 それどころか、返答がないのでは気持ちは腹立たしく、一週間以内に千紗から連絡がなければ、暴挙に走ることにした。

 銀行強盗などではなく、人を傷つけることになるだろうと、戸井田は独り決めをした。