「当たり前だろう。盗んでないのに、犯人にされれば誰だって怒るだろう!」

「もっともっと決定的なことがあるんだ」

「俺が盗ったところでもあるのか? 証拠を見せろ!」

 大口は笑った。

「とうとう、ボロがでたな」

「ボロ?」

「そうだよ。証拠を見せろって言ったよね」

「ああ、言った。それが?」

「田久万くんはタオルを盗って隠したんだ」

「隠すってそんな時間どこにあるんだよ? 千紗、俺が盗ると思うか?」

 千紗は首を横に振った。

「ほら、千紗だって俺が盗ってないと思っているんだぞ!」

「田久万くん、いい加減にあきらめよう」

「何があきらめようだ!」

「田久万くんは時間を止められるんだよ」

「ええ、知ってんの?」

 千紗は驚いて、田久万の顔を何度も見た。まばたきも半端なく、パチクリさせていた。