「ダメだよ。大事にしている物がなくなって、犯人を野放しにするのはよくないよ」

「千紗がいいって言ってんだから、いいじゃないの?」

 田久万もそう思ったので言った。

「もう、君たちはいいかも知れないけど、ここに集まったみんなは納得がいかないと思うよ」

 生徒たちは大口にうながされて、『犯人』は誰だ。と連呼した。

 教室はうるさかった。

「じゃあ、誰だ!」

 田久万は腹の底から力いっぱいの声を出した。

 教室は静まり返った。

「そうだろう。気になるね」

「もったいぶんなよ」

「まずは千紗くんがタオルを持って、教室に入ってきたのを知っているのは?」

「俺だけかな……」

 田久万は言った。
「千紗くん、今日、学校にくるまで、つまり家からここまでに、家族以外で遅刻を知っているのって、誰?」