外観は変わりはない。小火騒動があったマンションとは思えない。

 もちろん外観が変わっていればもっと大騒ぎになっていたはずだ。

 戸井田はネットカフェに戻ったが、インターネットを観覧しても、面白いことはないので、自宅に戻っていたのだ。

当分、家に帰る予定ではなかったが、急遽変更した。それは頭の中が千紗のことでいっぱいだったからだ。

 今晩にでも千紗に接触を試みることにした。無意識に持ってきてしまったピンクのタオルを戸井田は扱いに困っていた。返すのも何て言えばいいのか思いつかないし、捨てるのもできなかった。結論として所持することにした。

 千紗に会うのだから、洋服を着替えに戻ったのだ。

 マンションに入っても人の出入りが頻繁にあるわけではないので、誰にも会わずに入り口の前まできた。

 戸井田は鍵を挿し、回した。ドアノブを回し、引っ張るが鍵が閉まっている状態だ。

 誰かいるのか?

 戸井田はもう一度鍵を回し、ドアノブを回し、引いた。

 今度は開いた。

 室内に誰かいるのか。

 玄関には女物の靴が一足だけきれい置いてあった。ハイヒールだから女性と断言できる。

 戸井田は靴を脱ぎ捨てて、耳をすました。