自分のアパートで仕入れた情報を大体まとめ終わった頃に、机の上に置いていた携帯が小刻みに振動した。




 「原田です。今、現場のアパートにいます。今から大丈夫ですか?」




 電話の相手は原田で、市川が時計に目を向けると午後7時を過ぎたところだった。



 市川は「今から向かいます」と言って電話を切ると、必要な物をショルダーバックに詰めて、急いで部屋を出ていった。



 自分が仕入れた情報は、原田が握る情報を知ることができたなら伝えるつもりでいた。



 警察がそんなことをする可能性は低いが、「個人的に」という原田の言葉には市川に期待を抱かせた。



 現場のアパートに行くと、そば屋の前にスーツ姿の原田が立っていた。



 タバコを吸っていたが、しっかりと袋型の携帯灰皿を手に持って、細かに灰を落としている様子に市川は小さく噴出した。




「遅くなってすみません」




 市川が急いだように歩み寄っていくと、「いえ、急に連絡したもんですか」と原田は言ってタバコを携帯灰皿の中に押し込んだ。