その言葉のあと肩を掴んだ市川の右手を軽く避けた原田は、


「その話も会ったときにでも。お互い同じものを追うかもしれません。調べることがありますので」


 と言って来た道を原田は急ぐように戻っていった。


 そうは言ったものの、おそらく市川の質問攻めを回避したかったのだろう。



 朝早かったこともあり、原田を無理に引き止めることはしなかった。



・・まるでドラマかなんかだな。



 原田の口振りからすれば、黒沢と佐山探偵事務所のことを知っていて、尚且つ「ゼロ」という人物の存在まで知っているということになる。



 心臓を体から摘出された遺体に、不可解な言葉を残して死んだ男。



 それを調べる探偵に、何かを知る警察官。



 ドラマにしたっていいくらいの現実だ、と市川は漏らし、不思議な笑みを浮かべた。



 どこか嘲笑したような、でも楽しそうな。