ゆっくりと右に回し、ドアノブを手前に引くと、市川の期待に応えて開いた。


 よっしゃ・・・ってあれ?



 市川が喜んでドアを引くと「ガチャ」という音が鳴り、ドアは10センチ程度開いて止まった。



 その隙間に目を移すと内側のチェーンが掛かっていた。



 中は相変わらず薄暗くて良く見えないが、聞き耳を立てると微かに吐息のようなものが聞こえる。



・・気のせいか?



 市川が部屋の中に意識を集中していると、突然両肩を軽く掴まれ


「市川さん、何してるのかな?」


 と大学で顔を合わせた原田がいた。



 体を強張らせた市川は満面の笑みを浮かべ「取材です」と咄嗟に言ったが、原田は「でもそれは犯罪ですよ?不法侵入は」と笑顔で答えた。