仮面

　自転車くらい買おうかな、と愚痴りながらフラフラと少しずつ目的のコンビニに近付いていく市川。



　そんな中、市川は唐突にその歩みを止めた。



　市川の顔はゆっくりと左側に動き、上田が死んだアパートを捉えた。



・・鍵空いてねーかな。



　上田の部屋に犯人に繋がる証拠が残されているかもしれない、市川は思い、辺りをキョロキョロと見回した。



　今いる歩道とアパートの反対側の道に人影がないのを確認すると、市川は辺りを見回しながらアパートの階段を足音が立たないように上っていった。



　２階に上がると、通路に誰もいないことと、何箇所かの部屋のドアにある郵便受けに新聞が刺さっているのを確認すると、市川は足音を立てないように上田の部屋に向かった。



　上田の部屋の前に立つと左右を２回ほど見て、市川は裏からＴシャツの裾を掴み、Ｔシャツに覆われた手でドアノブを掴んだ。