彼女の名前は川本順子といい、市川の読み通り上田と大学3年生からの付き合っていた。



 ただ彼女の話によると、事件の1ヵ月前くらいに一方的に別れを告げられたそうだ。         


 彼女自身その理由がわからずにいて、上田に何度となく答えを要求していた。



「それで彼は?」



「・・理由はないけど、研究のために別れなければならないって」      



 市川は川本が口にした「研究」という言葉に敏感に反応した。       


 上田の隣に住んでいた学生の話にも「研究」という単語が出てきたと、市川は大家の話で確認している。



「ちなみに上田さんの学部はなんですか?」    


「人文学部でした。臨床心理学を専攻していました」



 心理学を学んでいたということは、大方予想の範囲であった。



 しかし臨床心理と言われると、具体的にどんなことをやるのか市川にはわからなかった。