今回自殺した男が犯人とされたのは、警察官の男と麻薬の売人を殺した事件についてだった。



 その警察官と麻薬の売人、そして自殺した銀行員の男が共謀し、麻薬を売りさばいていた。



 その中で初回の麻薬の売買で資金提供した男が、一番報酬額が少ないことに怒りを蓄積させて犯行に及んだということだ。



 男はまず麻薬の売人を殺し、そして警察官の男を白昼堂々仕事場付近で首を包丁で刺して殺した。



 当時はまだフリーではなかった市川は、ただぼんやりとそのニュースを眺めていた。



 ニュースによると麻薬の売人は故郷の田舎で殺され、しかも死体の顔は硫酸で焼かれていたという。



 市川はまずその点が変だと思った。



 どうして麻薬の売人をわざわざ遠く離れた田舎で殺害したのか?



 3人は同じ県に住んでいたのだから、そこで殺すのがセオリーではないのだろうか?



 どうして麻薬の売人の死体だけに硫酸を掛けたのか?