しかし肝っ玉座ってるなぁ、おばちゃんは。



 市川は部屋の中に入ると、そんなことを感慨深く思った。



 死体を見ていないとはいえ、同じ建物内で殺人事件があったと聞いたら少しはたじろいてもおかしくはない。



 あまりにも突拍子なことで、状況を理解できていないのだろうか。




「さてと。やりますか」




 市川はバックから手帳を取出し、メモを写したページを開いた。



 急いで書き写したものだから、ずいぶんと乱雑なメモに市川は苦笑した。



 被害者のメモに記されていたのは今週と題されたもので、1から7まで箇条書のように名前が書かれていた。



 今週と書かれているだけで、それが今月のことを示しているのか一見わからないが、上から6つ目に「大家」と記されていた。



 つまりは今日を含めた一週間の予定と考えても良さそうだと、自分の咄嗟の行動に市川は安堵した。