市川は机に並べた新聞記事の切り抜きの前で頭を悩ませていた。



昨日の昼のニュースで6年前のある殺人事件の犯人が、刑務所内で舌を噛んで自殺したということが報道されていた。



 そして壁の下側には「俺はハメられた」と血で書かれていたそうだ。



 警察はそれを気が狂った上での単なる自殺として処理するようだが、フリージャーナリストの市川は以前からその男が起こした事件について疑念を抱いていた。



 そして今回の自殺を受けて疑念は確固たるものとなった。




「やっぱり変だよなぁ」




 市川の机に並べられていた紙は、自身が住んでいる県内で起こった殺人事件と、違う県で起こった3件の殺人に関する新聞記事などだった。



 以前から疑念を抱いていたせいもあり、仕事の傍ら少しずつ集めた資料だ。



 椅子にもたれ掛かり薄汚れた天井を見上げておもむろにタバコを口にくわえた。