運命という絆

拓真は、言葉を選びながら話を続けた。
「僕は、進学も就職も今は考えていません…父は、この世に生を授かった時から無であり運命に翻弄され続けながら生かされ続けた事の答を導き確信している様です。僕は逆に今迄、在って当たり前の運命の中で答を出す迄、後365日丁度!時間が無い中で、一体、何をしたら良いのか途方に暮れながら焦る毎日の中、今、此処に居ます…」
「此処に貴方が今、居る事も運命と云う事なのかしらね…」
「由美ちゃんを寝かせ、父を知る貴女と今、同じ空間に居る意味…」
「貴方のIQには恐れいるわ…会長さんには、きっと私の心は読まれているんでしょう?」先程迄は、しなかった女性を強調したパフュームを漂わせながら香は敵わないとばかりに、若い生娘には無い社会で培った微笑みを浮かべた。
「決して飲んだ勢いだとか、ふざけてではありません…僕も社会に出る覚悟があり、女性と云うものを知って置きたいと思っていました。…これも運命として受け止めましょう…」拓真は飄々と煙草を燻らせ冷静を装ったつもりだが、脇からは、止めどなく冷たい体液が伝って行くのを感じた。
「参ったわ!やはり貴方を通して、私はお父様を感じてしまっている自分が出ているのね…」香も胸のときめきを大人らしく堪えていたつもりだったのを読まれていた事に年甲斐無く恥じらいながらも、心が同調してくれていたのに驚きを隠しながら頭を一度、拓真に向けて縦に振り頬を染めた。時がタイムスリップし純真な乙女の時の自身に舞い戻っていた。


「これが血統と云うものなのね。貴方を通じて、当時の私に戻った気分…初めてとは思えない愛され方。充分に貴方の父を感じ取る事が出来ました。貴方こそ、私で目的を達せられたかしら?…恥ずかしながら年甲斐無く女性の悦びをこの歳になって初めて私も知りました…」

身体の火照りがまだ続くながらも、我を取り戻した香は振り乱れた長い髪の毛を整えながら素直に言った。
隣に居る拓真はベッドで黙って寝そべったまま、天井をじっと見据え煙草を燻らせている。

「…本能とは面白いですね。恋心が無くとも行為は勝手に済ませされるとの確認が出来ました。これが本物の愛あるパートナーなら、人間に与えられた最高の至福の時間なのでしょう…」
拓真は、煙草を消すなり着衣を始めた。
まだ、冬の夜のとばりの真っ只中での拓真の素速い行為は香を落胆させた。
「もう一度…」香は喉迄、出かかった言葉を堪えた。