運命という絆

「あの合同祭は、父が乗り移っていた気がするんです…父が伝えたい事を僕を通じて行った様な?」
「それだけの事を貴方は、見事にやり遂げた…」
謙遜ではなく、素直に感じた事を拓真は述べたが、母は、それも拓真の能力だと認めていた。

「去年迄のクリスマス…それ迄は家族揃って迎えていました。それが、一変したのですから…」
拓真は、神妙な表情を浮かべ言った。
「色々あったみたいね…辛かったら話さなくて良いのよ。シャンパン開けるわよ!」それは、イメージで"パン"と派手な音を立てる事無く、静かに"スポン"と小さく心地良い音だった。由美は、両耳を塞いでいたが拓真は、動じず様を眺めていた。
「あれ?"パン"って栓が飛ばなかった…」
由美が不思議そうに拍子抜けして言った。
「お母さんは、ボトルを静かに横に廻していたでしょ。それで、ボトルの炭酸がシャンパンに再び戻り圧力が下がったんだよ」「会長さんは、何でも御存じなのね。一体、貴方のIQは幾つ在るのか興味あるわ」
「これも父が、教えてくれた事です…」
拓真が笑って答えた。
「お父様が?…」
そう母が感心し、拓真、由美、そして自身のグラスに黄金色のシャンパンを注いでいる時に記憶の引き出しが開き始めた。
「まさかね?…」
注ぎ終え、母は、自身の過去の記憶の整理をし始めていた。


「何これ!?香りは良かったから美味しいのかなと思ったけど甘くない…不味い!これが、お酒ってものなの?…」「由美には、未だ判らないかもね…会長さんは如何かしら?」
「ビールよりは、美味しいですね…実は、幼稚園の時に、父のグラスのビールを一気に飲んで"ケロッ"としていたらしいです…」
拓真が舌を出した。
「あらあら…医者として聞き捨てならないわね」「会長は小児喘息を患っていたのに煙草を始めて発作が止まったって!…」
「えっ!?喘息持っててタバコなの?それで発作が起きなくなったなんて…」
「不思議でしょ?僕も父と同じ天の邪鬼体質みたいで…」
拓真の開けっ広げな言葉に医師として、信じられないというか呆れて拓真を見詰め直した。
「父は、こんなものじゃあ有りません…お母さんは、"硬膜下血腫"って御存じでしょ」「打撲した事が起因で起こる可能性がある一種の脳内出血よね?」
拓真が首を縦に振り続けた。
「父が、僕の中学時代の運動会を見に来てくれた時のエピソードです…」