真面目さだけが取り柄でした。


クラスの友人と、雑誌の話で盛り上がったことはないし。


今まで彼氏もいなかったし、告白もされたことなんてなかった。


そもそも、そういうものに興味がなかった。


「委員長、古文のノート集めて職員室に持ってきてくれ。そのあと、話がある
。」


「わかりました。」


委員長は別にやりたかったわけではなかった。


クラスメイトが推薦したから、引き受けただけ。


本当は、人の前に立つのは苦手だった。



「古文のノートを集めます。列ごとに集めて持ってきてください。」



最前列の数名が気だるい返事をする。


私がいるこの高校は県でも有名な私立校。


馬鹿、で有名な高校です。


そんな高校ですから、わりと不良が多いです。


授業にでない、なんて日常茶飯事だから教師も注意しません。


そして、私がこの高校にいる理由はこの高校の理事長が父の古くからの友人であったから。


それだけの理由です。


別に私は頭が悪いわけでも、不良なわけでもないです。


こんなわたしでも中学は学年トップの成績でしたから。



「全員ノートは提出してくれましたか?」


「委員長様~俺たちだしてませ~ん」


「今後出す気もありませ~ん」


「ていうかノートもってませ~ん」


教室の端のほうにいた生徒数名がゲラゲラと笑い始める。


「わかりました。」


これ以上言うこともないし、早く職員室に届けよう。


ノートを抱えると後ろから手が伸びて半分のノートが持っていかれる。


「委員長。俺も持つよ。」


「あ、ありがとう」


彼は副委員長の今泉陽平くん。


なにかと私をサポートしてくれる。


「ヒューヒュー!!真面目なお二人が熱愛ですか~?」


「やべーな、それ。」


クラスが全体的に笑い始めた。


だが、もう何度言われたかわからないぐらいに言われ続けたため今泉くんも私も、気にしていなかった。


職員室の前まで行く。


「あ、ここまでで良いよ。先生が話あるって言ってたし。」


「そう?わかった。じゃあ先に戻ってるから。」


「うん。ありがとう。」


今泉くんがノートを私にわたし、廊下を歩き始める。


それを軽く見送り、振り返って職員室のドアを開ける。


「失礼します。古文のノートをもってきました。」


軽く見渡すと古文の担当であり担任の石井先生を見つける。


「おう。こっちだ。」


「はい」


石井先生の後ろにまばゆいくらいの金髪が見えた。


「ここにおいときますね。それで話ってなんですか?」


「あぁ、こいつの事なんだけどな。おい、自己紹介しろ」


ずっと下をむいていた目が私を正確に捉える。


金髪に耳はいくつも穴が開いている。


端整な顔つきはしているが目つきの悪さと眉間の皺が気になる。


2秒、いや3秒ほどだろうか。


二人で見つめあっていると眉間の皺がみるみるうちに薄くなっていく。


目つきもにらみつけたような目ではなくなった。


口元を緩め、薄い唇を動かした。


「みーちゃん。やっと見つけたよ」


私の名前は悠美だ。


ただ、いままで私をみーちゃんと呼んだ男子はいない。


私は、この男を知らない。


「ん?なんだ。知り合いなのか?」


「…すみません。人違いじゃないですか?」


「んー?宮下悠美、でしょ?」


なんで、名前をしっているんだ。この男は。