「泉川さんって、あいつと仲いいんだ。」

「ん?あいつ?」

「悠斗と!」

「そんなことないけど…。」

“悠斗”ってのは、さっきからあたしが話していた男子、

茂長悠斗〔しげなが ゆうと〕

のこと。

「付き合ってるとかー?」

「ないない。茂長とは席が隣なだけ。」

てか、あいつが話しかけてくるんだし。

「じゃあ、あれは?えっと…寺崎君!」

「愁?」

寺崎愁〔てらざき しゅう〕

あたしの幼馴染で、今は2組にいる。

ちなみにあたしは、1組。

「ほら、また名前で呼んでるしー。」

「愁は幼馴染だからね。」

「えー?でも、泉川さんが男子を名前で呼ぶのって寺崎君くらいよね。」

確かに。

でも、昔から愁って呼んでたから。

今になってもそれが染み付いてるみたい。

「俺も仲いいし!」

「悠斗は黙ってて!」

「ひっでー…。」

横から入ってきた茂長がひどく言われていた。

ちょっとかわいそう。

「で、でも…。茂長も、どちかといえば親しいほうかも。」

「まじ!?っしゃあ!」

ちょっとフォローしただけなのに、大げさに喜ぶ茂長。

わかんない奴だなぁ…。

でも、笑ってる皆を見て

ちょっとだけ暖かくなったのを。

あたしは今でも覚えてる…。