「今なら、こんなことだって出来る。」

突然そう言った悠斗は、あたしの手をくいっと引いて

ちゅ、と軽い音を立ててキスしてきた。

「ちょっ…。」

「おまっ…何やってんだ。」

あたしと愁が声を上げる中、悠斗は

「ほら、早く行こーぜ。」

そう言って、軽々しい足どりで

前を走っていった。

慌てて走り、あたしと愁は顔を見合わせた。

「澪?」

「何ー?」

「…なんでもねー。」

そういった愁の横顔は、なんとなく楽しそうで

あたしは夢中で悠斗の背中を追いかけた。

暖かくも少しだけひんやりした

高2の春を、今迎えようとしていた。


end.