男嫌いなあたし。

そして、夜。

「…ここ?」

「澪奈様ですか?」

「うん。入ってもいい?」

「はい、もちろん。」

あたしは、今日初めて厨房に足を踏み入れた。

わー…

こんなになってたんだ…。

結構広いし。

「…どうかしましたか?」

「いや、初めて入ったなぁって思って。」

「それはそうですよ。澪奈様が入るようなところではないですしね。」

メイドさんは苦笑しながら言った。

「いいのよ、別に。今回は特別。」

バレンタインのチョコは

自分で作らないと意味がないんだってさ。

教室で、女の子達が言ってるのを

つい最近耳にしたのだ。

「それでは、材料は揃ってますから。はじめましょう。」

「わかったわ。まず、何をすればいいの?」

「板のチョコレートを細かく切ってください。」

あたしの目の前には

まな板と包丁。

…どうしよう。

あたし、1回も使ったことないんだけど…。