俺は、部屋から出て行った澪の背中を

少しだけ見つめた。

あんまり長く見てると

引き止めてしまいそうで、怖かったから。

「はぁ…。」

澪が行ったのを確認して、

ベッドにダイブする。


さっきの澪の顔。

俺に、ありがと、と呟いた澪の顔が

頭の中から離れない。

昔からあいつは、綺麗な笑顔で笑う奴だった。

でも、綺麗なら綺麗なほど

無理してる奴なんだ。

ちっちぇ頃からずっと一緒に居た澪。

俺の隣には、いつもあいつがいたはずなのに。

ついに俺の隣から離れていってしまった。


悠斗から引き離そうと思ったら、いくらでもそんなこと出来たのに

なのに、俺は出来なかった。

澪が、あまりに切なそうに、あいつを見つめてるから。

澪は無自覚だろうけど

俺にはばればれで。

あんな表情をしてる澪は

俺だって見たことなかったんだ。